横須賀の築90年の古民家再生工事。ブログで書かせて頂いていた、「海の見える縁側の家」が3月末に竣工し、お引渡しさせて頂きました。
庭付きの23坪の平屋。
日本家屋に洋間が一部屋ついています。
お施主さんは若いご夫婦です。
一昨年の5月、最初にお会いした時、開口一番のご希望は「外から見ると古民家、でも中に入ると新建材を使った現代の家では嫌なんです。」でした。
古いものがお好きなお施主さんのために、できるだけ既存のものを残し、末永くこの家に住めるように、材料を吟味し、知恵を絞り、手間と時間を掛けて施工しました。
サッシは使わず、全て木製の建具。材木は無垢の木を使い、自然素材で造った本物の家です。
引っ越されたお施主さんの話では、心地よく過ごされているとのこと。どこがどうということではないけど、ふと、縁側に射す日の光に「いいなぁ」と思ったり…。
縁側でお月見もするそうですよ。
森林の中に居ると心地よいように、自然素材で造った家はそこに居るだけで心地よく、落ち着きます。
石垣の上の家です。
引き違い戸の玄関。
杉材の建具。
外壁は洋間を除いて日本下見張り.
(にほんしたみばり)。雨仕舞が良く、木材が腐れにくいので、長持ちします。日本に古くからある工法です。
洋間の外壁は横板張り。
風雨に耐えるように厚い板を張っています。窓には取り外し型
の雨戸を付けました。
肘掛け窓
庭に面した縁側
雨戸と戸繰り窓(とぐりまど)
戸袋
雨戸の枚数が多いので、雨戸を戸袋に収めるために、家の内側に戸繰り窓という小窓が付いています。
戸繰り窓。この家は物入れの中に付いています。
この窓に手を入れて、雨戸の桟(さん)をつかんで出し入れします。
長い縁側の雨戸。開けるのにも閉めるのにも時間が掛かります。
開け閉めにちょっとしたコツもいります。
面倒だと思うか、楽しいと思うか…。
時間がかかることで、小さな発見があったり、物の見方が変わったりするかもしれません。
ゆっくりっていいものです。
玄関と次の間
玄関
式台の下の下足入れが壊れていました。丁度よい古材があったので、それを使って修繕しました。
次の間
玄関を上がると次の間。お客様をお迎えする二畳の部屋です。
壁は並大津という漆喰より少し柔らかいかんじのする土壁。
温かみのある色合いです。
座敷
六畳と八畳の座敷
*襖と障子はお施主さんのご希望で貼り替えていません。ご自身で貼り替えられるとのこと…。
襖を開けると広々として開放的。部屋の広さが変わるのも日本家屋の良いところ。
畳の井草(いぐさ)の香りが心地よいです。
六畳の窓辺 肘掛け窓と縁側
八畳の床の間。
既存の書院の建具がきれいです。
洋間
玄関から入ってすぐ、次の間右手の襖を開けると小さな洋間があります。広さは四畳半。
床と天井は杉材。壁は白の漆喰。白い壁と天井が高いのも手伝って、実際より広くかんじます。
この窓から海が見えます。
格縁天井(ごうぶちてんじょう)
洋間にもよく合う張り方です。
既存の木製のコンセント。
今も使えます!
土間と板の間
お施主さんが考案された土間と板の間。
四畳半の畳の部屋を板の間に替え、柱だけを残して押入と壁を取り、土間と続きの部屋にしました。
土間と板の間
傷んでいた柱。しりばさみ継ぎという継ぎ手で交換しました。
貫穴(ぬきあな)の痕。穴を古材で埋め木しました。
流し台。木で枠を造り、銅板を貼り、お施主さんが用意した机の上に設置。銅板は月日と共に落ち着いた色に変わります。
板の間から見た土間
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